医学部に入り、医師になりたいと思うと、当然将来のキャリアプランを考えますよね。
そして調べるうちに必ずぶち当たる言葉が「医局」という言葉。
ともすれば、「医局」という言葉がさも当たり前のように使われている記事も少なくありません。
広辞苑では、「医務を扱う部局。また、病院などで医師が詰め控えている室。」と書かれていますが、これでは実態が見えません。
そこで、この記事では医局とはどのようなものなのか、社会人を経て医学部に再受験で入学した筆者が、一般の方にもわかりやすく解説します。
1.医局という言葉の2つの意味
2.医局が持つ意味とは?
3.医局人事なのに引越し費用が出ない!
4.まとめ
医局の持つ2つの意味
広辞苑にもあるとおり、医局には一般に2つの意味があります。
①大学病院における教授をトップとする各診療科
②各病院における医師の控室
②については、部屋である以上の意味はないのでここでは扱いません。
一般の方にわかりにくいのは、①の意味であると思います。
以下、この記事では特に断りがない限り、①を意味することを単に医局と呼びます。
医局の実態とは?
私の経験上、医局を一言で表すならばこれに尽きると思います。
「関係病院の人事権を持つ中小企業」
以下で解説します。
関係病院に人事権を持つとは?
大学病院以外の市中病院の多くは、多かれ少なかれいずれかの大学病院の影響を受けています。
そして多くの場合、その市中病院の医師の人事には大学病院が関与しています。
平たく言えば、大学病院の医局から一定数医師が派遣されるということです。
(派遣、とは言うものの法的には関係病院との雇用契約が結ばれることになります。)
中小企業とは?
私が医局を中小企業と呼ぶ理由は次のとおりです。
・人数が多くない
・教授(企業でいう社長)が十数年変わらない
・コーポレートガバナンスがガバガバ
解説します。
人数が多くない
医局の人数はかなりバラつきがありますが、私の経験上最も少ないところは3人でした。
歴史のある大学のメジャー科では人数がそれなりに多いですが、それでも100人を超えるところはないのではないでしょうか。
大企業では、同じ社内でも顔も名前もわからない人がたくさんいますが、医局ではそんなことはほぼないです。
教授が3年目の専攻医を叱りつけるなんてことも日常茶飯事です。
大企業では社長が新入社員を叱りつけるなんて場面はまずないですから、私にとっては少しカルチャーショックでした。
教授(企業でいう社長)が十数年変わらない
教授というのは医局のトップで、教授選挙によりその大学の他の教授からの投票により決まります。
そして、定年は各大学で定められています。
多くの大学では65歳だと思います。
医学部の教授になるには、博士号を取得した上で論文も多数執筆しているなど、数多の条件が必要となってきます。
とはいえ、若い先生であれば40代半ばで教授になっています。
私の知る範囲だと、短い先生でも10年は勤め上げています。
東京経済大学の柳瀬典由ゼミナールによると、日本の大企業の社長の在任期間は平均で5.7年、中央値で3年だそうです。
平均値よりも中央値のほうが感覚に近いと言いますから、概ねこの数字は皆さんの感覚に近いのではないでしょうか。
そしてトップが10年以上も変わらないと、医局の雰囲気そのものが教授次第で大きく変わることになります。
大企業の社長のように3年で変わってくれれば、重苦しい空気もなんとか耐えられるかもしれません。
ところが10年以上もそのような空気だと地獄です。
教授ガチャに大きく影響されるのが医局です。
コーポレートガバナンスがガバガバ
医局は、教授のワントップ体制です。
教授の専制政治と言っても差し支えないでしょう。
大企業では、取締役会や経営会議などを経て重要な経営事項は決まります。
つまり、少なからず社長以外の意見が反映される機会があるわけです。
良くも悪くも誰が社長になろうとも、ある程度の範囲に結果は収斂するはずです。
一方で医局では、教授ガチャがすべてです。
教授が人格的にしっかりとした人であれば問題ありません。
人格的に難のある人が来たら終わりです。
実際に私の周りで起きたヤバめの事例です。
・教授(既婚)が自大の女子医学生と不倫、その女子医学生を自分の医局に入局させる
・教授が育休中の男性医師を、彼しかできない業務があるため招集
当該医師は一旦拒否するも、ゴリ押しされてやむなく承諾
噂に尾ひれはつきものですが、これらは直接的に見聞しており間違いなく実際に発生した事案です。
医局人事なのに引越し費用が出ない!
一般企業であれば、転勤の際に会社都合の引越が生じる場合、当然引越代は会社から出ることでしょう。
(企業によっては全額ではないかもしれませんが、多少は出るはずです)
ところが、医局人事による引越の場合、引越代は出ず、全額自己負担となります。
これは、医局人事であっても形式的には派遣先の病院と医師本人が雇用契約を結んでいるに過ぎないからです。
実質的に医局命令で、断ったら医局にいれなくなるような状況なのにも関わらずです。
場合によっては学会費用も出ない
多くの医者は、いくつかの学会に所属しています。
これは、学会に所属することで最新の知見を得るとともに、同僚のネットワークを構築する意味も大きいと思います。
一般企業であれば、業務に関連することであるから当然出張代や宿泊代、日当などが出ますが、医局では出ないこともあります。
出るとしても、学会発表がある場合のみなどといったような条件が付されていることもあります。
まとめ
少しは医局がどのようなものかおわかりいただけたでしょうか。
皆さんが医療の実態により興味を持って、少しでも自分の未来を切り開くことの役に立てたら幸いです!
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