女性の医師は産休・育休を取れない!?医局制度による弊害を解説

皆さん、こんにちは!

女性の方は、医師になった後に出産する可能性がある方も多いかと思います。

日本では、働いている女性は産休・育休を取得して、出産手当金・育児手当を受け取るのが一般的です。(もっとも、最近は男性も育休を取得するようになってきました。)

ところが、女性医師の育休取得率は59%です。(平成29年度)
日本全体では83.2%であるため明らかに女性医師の取得率が低いことがわかります。

日本医師会「女性の勤務環境の現状に関する調査報告書」

https://www.med.or.jp/joseiishi/wp-content/uploads/2018/10/h29wd_survey.pdf

この現状が望ましい姿ではないことは誰の目にも明らかです。

ですが、特に医学部再受験を志し、医師になろうとしている方にとってはこの現状は予め知っておくべきことかと思います。

そして事前に対策を考えることが肝要でしょう。

この記事ではこのような現状に至る理由や、取るべき対策について書きますので是非とも御覧ください!

(余談ですが、女医という言葉は違和感があるのでこのサイトでは用いません。)

目次

女性医師の産休・育休取得率が低い理由

大学の医局制度が原因の根幹にあります。

このことを理解するために、医局の運営方針とそれに左右される医師の実態について簡単に触れます。

そもそも医局のという言葉が意味するところについて認識が曖昧な方は、リンク先の記事でわかりやすく説明していますのでぜひご覧ください!

大半の若い医師は大学病院か大手の市中病院に所属する

医学部を卒業して国家試験に合格すると、2年間の初期研修を行うこととなります。

その2年間の間に、自分がどの診療科を専門とするのかを決定して、3年目からは特定の診療科の医師として働くことになります。

ここで、ほとんどの医師は内科や小児科など、各領域ごとに設定されている専門医の取得を目指します。

(専門医の取得は医師として働く上で必須ではありません。ですが、ほとんどの医師は取得しますし、バイトの要件となっていたりするため、取得しない医師はほとんどいません。)

専門医を取得するためには、専門医プログラムを有している病院でなければ取得できません。

大学病院や大きな市中病院がプログラムを有していますが、大学病院でプログラムに登録する医師がマジョリティだと思います。

大学病院(医局)の仕組み

大学病院は診療科ごとに医局と言われる組織を構築しています。

医局の特徴
  • 大学病院には多くの関連病院がある
  • 各医局はその関連病院の対応する診療科の人事権を持っており、医局から医師を派遣している
  • そのポジションの人事権は医局が握っているけれども、法的な雇用関係はその関連病院と医師との間に構築される

「人事権は医局、雇用主は関連病院」

明らかに矛盾するこの実態がまかり通る理由は、医局と関連病院にとってはwin-winで、自ずと医師が従わざるを得ない制度設計となっているからです。

各立場の思惑

医局:関連病院の数がその医局の影響力を表す。つまり多ければ多いほどよい

関連病院:慢性的な医師不足で、安定的に医局から医師が供給されることは好都合(もっとも、初期研修を終えて医師になりたての3年目の医師が使いものにならないのではないのか、という懸念もあります。このように3年目の医師が派遣される病院では、ベテランの医師もセットで派遣されることがほとんどです。つまり、関連病院からしたら、若い実力としては生半可な医師を雇用するかわりに戦力として十分な医師を雇用できるということで、トータルとしてはプラスになっているわけです。)

医師:医局命令なので実質的に拒否権はなし

このような理由でこの制度は成り立っているわけです。

もっとも、関連病院からすると初期研修を終えて医師になりたての3年目の医師が使いものにならないのではないのか、という懸念もあります。このように3年目の医師が派遣される病院では、ベテランの医師もセットで派遣されることがほとんどです。つまり、関連病院からしたら、若い実力としては生半可な医師を雇用するかわりに戦力として十分な医師を雇用できるということで、トータルとしてはプラスになっているわけです。また医局人事に関して法的拘束力はありませんが、特に若い医師は断れば自身の立場が危うくなって専門医の取得自体が困難になるため、実際はほぼ強制的に行かざるを得ません。

若い医師の転勤事情

専門医の取得を志す若い医師(これを専攻医と言います)は1〜2年程度の短いスパンで転勤します。

専門医の取得のためには、当該科について広く学び、実績を積まなければいけません。

例えば、内科専門医を取得しようとすると、消化器・循環器・膠原病など15群から少なくとも1つ以上、合計70疾患群200症例以上の経験が必要とされています。

どこの病院も得意なカテゴリーとそうでないカテゴリーがあるので、複数の病院を回って症例を稼ぐのです。

この場合、期間が短いため有期雇用契約となりますが、これが問題なのです。

厚生労働省によると、育休を取得できる労働者の条件は次のとおりです。

子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと

https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_r01_12_27.pdf

この条件を満たす若い女性医師が多くないのが実情です。

妊娠した場合の医局・関連病院の対応

妊娠すると、関連病院は代わりの医師の派遣を大学に求めます。

外来や病棟管理などが回らなくなるため当然ですよね。

医局からしても、医局の権力を誇示する関連病院を失いたくないためその要求を飲むことになります。

この結果、医師は法令上育休を取得するために必要な条件を満たしていませんので、その所属している関連病院を退職せざるをえなくなります。

法律上は不当解雇だとして医局と戦うこともできるでしょうが、今後もその医局で働き続ける選択肢を取る場合、波風を立てずにいることが得策だと考える医師がほとんどでしょうから、ほとんどの医師は退職することを選ぶことになります。

退職後

退職後は、法的には無職になります。

とはいえ、医局には所属したままでいることが出来ます。法令上は医局とは何の関係もないのですから。

子どもが少し大きくなって、保育園などに預けることが出来たら、何らかの形で復職することになります。

この際の復職先は医局との相談になります。

ちなみに、法的に無職になるので、保育園の入所基準は厳しくなります。

医局と相談して、次年度の就労予定書を発行してもらえれば幾分入りやすくなりますが。

事前にできる対策

慎重な医局選び

このような現状を把握した上で、入局する際には子どものいる女性がしっかりと働けている医局を選ぶとよいでしょう。

医局によっては、女性医師の産休・育休の完全取得や子育てのための当直完全免除をうたっているところもあります。

もっとも、PRしている内容と実態が一致しているかどうかは若手の医師や他科の医師など、様々な角度からアプローチして情報収集することは必須ですが。

学生結婚・出産

特に医学部を再受験する方は、学生結婚や出産を視野に入れてもよいのではないでしょうか。

多くの場合、再受験される方は学生でありつつもそれなりの年齢であるわけですから。

個人的には、経済的な問題を乗り切れるならば学生結婚はよい選択肢だと思います。

学生結婚・出産を勧める理由
  • 多忙な医学部生とはいえ、働きながらの出産・育児よりは時間的余裕があること
  • 若いうちに子育てをしたほうが体力的に楽であること

家庭環境にもよるので一概には言えませんが、親からお金を借り受けて乗り切るのも選択肢の一つかと思います。

まとめ

この記事では医局という特殊な制度に起因する女性医師の産休・育休の取得率が低い問題を解説しました。

この現状が看過されるべき問題でないのは明らかで、漫然と慣習と化している医師界隈は少しおかしいのかもしれません。

それでも医師になりたいと思い、再受験する人もいるでしょう。

その思いは大変素晴らしいと思います!

ただ、我々再受験生には普通の人よりも使える時間がないわけですから、予め妊娠したときの立ち振舞いを検討し、そこから逆算して行動することは肝要かと思います。

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