医学部再受験について考えた時に、いろんな課題が思い浮かぶと思います。
- 最終的に合格できるのであろうか
- 資金面は問題ないのだろうか などなど…
そして皆さんがおそらく一度は考えるのがこれだと思います。
「再受験生の雇用先はあるのか」
特に文系就活をされた方などは、何十社受けてやっと1つ、2つの内定をもぎとるというような買い手市場を経験しているため、こういった疑問・課題が想起されるのではないかと思います。
結論としては、絶対に雇用先はあります!
この記事では、実際に医学部に再受験で入学した筆者が、再受験生の雇用先があると言い切れる医師の雇用に関する社会システムなどについて解説します。
そして医学部再受験を志す方が、より後悔のないよう一度しかない人生を歩むためのサポートになればよいなと思っています。
筆者の体験談
実際に私がポリクリ(医学部4年時以降の臨床実習)で各診療科を回っていても、必ずと言っていいほどスカウトがあります。
「君、将来は何科志望なの?」
「この科は手技が身についていいよ!」
「君のような再受験生でも、Learning Curveが短いから活躍できる期間が長いよ!」
こういった声を各科でかけていただけます。
それは、私が優秀だからではありません。
(実際に私のCBTの学年順位は真ん中より少し下でした。)
単に、全学生を勧誘するように各医局(大学病院の診療科)の中で決まっているからです。
もっとも、私が通っているのが地方の大学なので、都会に比べて売り手市場で学生優位だという事情はあるでしょう。
とはいえ、どこにでもというわけにはいきませんが、人気病院や都会の人気診療科とかといった厳しい条件でなければ、かなりの確率で希望する進路に進めます。
ましてや雇用先が全然見つからないといったことは到底考えられません。
前提となる医師のキャリアプランの概説
一口に医師と言ってもその働き方は多様ですが、およそのパターンは別の記事で詳説します。
ざっくりいうとこんな感じがスタンダードです。
①初期研修(2年)→②専攻医(専門医を取得する期間、3〜5年)→③専門医として活躍(サブスペを取ったり博士号を取ったり開業したり…)
①ほとんどの人は医師国家試験に合格すると、いずれかの研修病院で初期研修(2年)を行います。
②ほとんどの人は初期研修後に大学病院や市中病院(公営病院や民間病院など)に就職し、専門医の取得を志します。
専門医はどこの病院でも取れるわけではなく、専門医機構に認められた病院でしか取れません。
イメージとしては大学病院ではほぼすべての診療科を扱っています。
市中病院では規模によりけりですが、いわゆるマイナー科(内科・外科以外)ほど取れる病院が少ない印象です。
③ここからのキャリアプランは割と多様性に富みます。
大学病院に残る人であれば博士号やサブスペシャリティ(サブスペ、専門医より更に細分化された資格)、指導医(専門医より上級の資格)を取ったりして専門性を深めることが多いです。
卒後10年目くらいで国内外に留学する人もある程度います。
開業したり、実家のクリニックを継ぐ人もいます。
専門医として活躍する期間は個人差が大きいので解説しにくいのですが、①と②については概ねパターン化しているので以下で解説します。
初期研修を行うための就職状況(マッチング→二次募集)
医師国家試験に合格した人が臨床医として活動するためには必ず初期研修を修了しなければいけません。
初期研修はどこでもできるわけではなく、登録された病院群の中から一つ選び、そこで研修を行うこととなります。
そのため、初期研修を行う病院を決める制度を医師臨床研修マッチング(通称、マッチング)といいます。
マッチングの大まかな流れは以下のとおりです。
①初期研修を行いたい病院の採用試験を受ける
②採用試験を受けた病院の中から希望順位登録表に登録する
・①で採用試験を受けた病院を必ずしも記載しなくてよい
・希望順位表には複数の病院を登録してよい(R3年度には最大で38の病院を記載して猛者がいる)
③無事マッチングが成立したらそこで初期研修を行う
・参加病院も希望順位登録表を提出する
・希望順位登録表を提出した参加者(医学部6年生や国浪生)のうち、参加病院の希望順位登録表の上位にいる者からマッチングする
④アンマッチとなったら、各病院の空席情報を確認し、直接病院の採用担当者に連絡をして二次募集に応募する
また、マッチングには以下のような特徴があります。
- 各病院には定員あり
- 東京周辺や人気病院は倍率が高い傾向(最大で10倍程度)
- 概ね地方の大学病院は定員が余りがち
このような特徴を踏まえると、必ずしも希望する病院で研修できるとは限りません。
さらに、再受験生を敬遠する病院もあると聞きます。
ただ、全国の初期研修募集定員数は臨床研修希望者数を上回っているため、必ずどこかの病院では研修できるでしょう。
理論上は、二次募集でも採用試験に落ちることはありえますが、一定数存在する人格が決して整っていないような人でもどこかの病院では初期研修を行っていることからも明らかです。
専攻医となるための就職状況
ほとんどの人は専門医の資格を取るために専攻医となります。
先述のとおり、専門医は認定されたある程度規模の大きい病院でなければ取得することができません。
内科専門医等であれば市中病院でも取得できるところがそこそこありますが、皮膚科や眼科などのいわゆるマイナー科については取得できる病院が限られてしまい、特に地方であれば大学病院でしか取得できない地域も結構あります。
そのため、専門医を取る人は大学病院か、規模の大きい市中病院に就職することになるでしょう。
なお、実際には初期研修先と同じ病院で専攻医となる人も結構います。
医師の就活と文系・理系の就活との対比
ここで医師の就職活動の状況について、文系・理系のそれと対比しながら述べます。
ざっくりまとめると、下表のとおりです。
売り手優位か買い手優位か | 概説 | |
文系の就活 | 買い手(企業)優位 | インターンから始まり、数多の就職説明会やES作成、SPI試験などを通過し、面接活動を経てやっと1,2社の内定を掴み取ることになります。 |
理系の就活 | 学校推薦→どちらでもない
自由応募→買い手(企業)優位 |
学校推薦は、学校や教授の推薦によるものなので、合格率はそれなりに高いです。とはいえ、売り手(学生)優位とまでは言えません。 自由応募は、文系就活と同じ仕組みなので、非常に狭き門になります。 |
医師の就活 | 地方大学病院など→売り手(学生)優位
都内の人気病院→買い手(企業)優位 |
地方の大学病院では、ポリクリでほぼ全ての科で入らないかとスカウトされます。人気病院ではマッチング倍率が10倍程度になることもあります。 |
地方の大学病院における状況
医師の就活では、少なくとも地方の大学病院においては圧倒的に売り手市場です。
例として、私がポリクリで各科を回っているとほぼすべての科でスカウトされます。
私だけでなく、周りの学生も同様にスカウトされています。
人気病院における状況
人気病院の診療科への就職はある程度厳しいものとなることが想定されます。
そのため、どうしても行きたい病院の診療科がある場合には、初期研修の段階でその病院を志望するか、関連病院を志望することが望ましいと考えられます。
都会の人気診療科における状況
次に、都会の人気診療科についてです。
都会の人気診療科に入るには面接・試験等の採用試験を課されることがあります。
そのため、結論としては採用試験で落とされてしまい、そこで働くことができなくなることはありえます。
ちなみに、2023年現在の人気診療科とは精神科や皮膚科、眼科などの科を指します。
これらの科の特徴は、いわゆるハイポな科だと学生から認識されているということです。
医師の地域・診療科の偏在を防ぐため、専門医のシーリング制度が始まっています。
シーリング制度とは、都道府県ごとに各診療科の専攻医の人数に上限を設ける仕組みのことです。
これについては別の記事でまた解説します。
少し譲歩するだけで選択肢は広がる可能性が高い!
このように、人気病院の診療科や都会の人気診療科では希望しても入職できないことがあります。
ですが、少し条件を緩めれば就職先が見つかる可能性はぐんと高くなります。
例えば、Aさんの第一希望が「東京都の病院で皮膚科の専攻医となる」ことだとしましょう。
この場合、少し譲歩して「埼玉県の病院で皮膚科の専攻医となる」ことにすれば、その実現可能性は随分と高くなります。
医師の界隈では有名な話ですが、埼玉県は医師不足の県として有名です。
当然専攻医としての採用のされやすさも高いということになります。
ということで、専攻医の時期は、理想に100%フィットした希望を叶えられる可能性は必ずしも高くないですが、少し譲歩するだけで希望どおりとなる可能性が高くなります。
まとめ
今まで述べたように、初期研修から専攻医に至るまで、すべて完璧に望みどおりの進路を取ることができる人は必ずしも多くないと思います。
が、少し譲歩するだけで希望どおりの道が見つかる可能性はぐんと高くなります。
ましてや、就職先が見つからないということは到底考えられません。
これから医学部再受験を目指して勉強される方は、就職先のことは一旦全く心配せずに、ひとまずは医学部に合格することを目標に勉強に精を出すとよいかと思います。
後悔のない人生となるよう、あなたにとって最適な選択と行動をしていきましょう!
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